研究紹介:胎児心筋走向のMRI画像解析

研究:医用画像,研究紹介

概要

ヒト胚標本を用いて,ヒト心臓の心筋線維の配列を拡散テンソルMRIを用いて検討し,心臓の心筋線維の配列がいつ頃からどのように形成されるのかについての研究を行なっています.

心筋細胞は長さ100μm,直径20μm の細長い形状をしており,主に長さ方向に収縮します.心筋細胞同士は介在板を介して結合し心筋として心臓の収縮運動を担います.腕や足の筋肉は線維方向に沿って収縮しますが,心臓の線維方向は “Helical" であることが知られています.Helical な心筋走向は心拍動に「ねじれ」を生じさせます.心筋繊維の収縮率が20%程度であるのに対して左心室内腔の容積変化率が70%にも達するのはこのねじれを伴う拍動が貢献していると考えられています.

心筋線維の配列は、解剖学者 Torrent-Guasp の心筋バンド説(心臓の壁を構成する心筋を広げていくと、1枚の帯状のものに
なる)が長い間信じられていましたが,現在では否定されています(詳細はを京都大学プレスリリースご覧ください.)

心筋線維のHelical構造が発生の各段階でどのように構築されているのか,も大変興味深いテーマですが,心筋線維走向は心臓における電気の流れ(興奮伝播)や拍動の様式を定める重要な情報です.心臓シミュレーションにおいても,心筋線維走向モデリングは重要なテーマの1つです.また,何度見ても飽きない美しさを感じます.

Saori Nishitani, Narisa Torii, Hirohiko Imai, Ryo Haraguchi, Shigehito Yamada, and Tetsuya Takakuwa, Journal of the American Heart Association (2020) より引用

詳細は医療NEWSの記事,京都大学プレスリリースをご覧ください.

論文・発表

  • 「ヒト胎児⼼臓⼼尖部における渦状線維走向の画像解析⼿法の検討」,原口 亮,西谷 早織,今井 宏彦,高桑 徹也,第63回システム制御情報学会研究発表講演会 (SCI’19) 2019年5月22日 システム制御情報学会

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